実家は地元ケーブルテレビに加入している。
ケーブルテレビの番組では近所の中学校で運動会があったとか、商店街に新しくできた飲食店とか、ローカルな話題が紹介されておもしろいので帰ったときにはわりと観ている。
こうした超ローカルな放送では地元の警察署による啓発コーナーもよく放送されている。
「生活安全課の〇〇警部」や「交通課の〇〇巡査」といった制服姿の警察官が出演して、オレオレ詐欺の電話に気をつけようとか交通安全を訴えたりするものだ。
今年の4月に自転車へ乗る際のヘルメット着用が努力義務となり、地元ケーブルテレビでもそれを啓発するコーナーが放送されていたのでなんとなしに観ていた。
タイトルコールのあと、スタジオに移った画面にあらわれる地元局アナウンサーと夏制服姿にヘルメットを着用した警察官。
「こんにちは、ヘルメット警部です」
…こち亀みたいな世界観の警部が出てきた。
言っておくと、普段の放送ではこんなキャラの立った警察官は出てこないのだ。みんな普通の制服姿に名前と役職で出演している。
おまけに画面右端からは地元県警のマスコットキャラクターのパペットが見切れ気味で飛び出している。
『こんにちは〜Kノハ警部だよ!』
だから普段の放送ではKノハ警部とか出てこないんだってば!初めてみたわこのパペット!
いったい何がはじまるというのか。寝転がっていた姿勢を正して視聴に集中する。
コーナーはアナウンサーとヘルメット警部の掛け合いでつつがなく進行していく。
自転車で事故にあったときに、ヘルメット着用のありとなしではこんなに死亡率が違ってくるんですよ
わぁ~ ヘルメットをしていないとこんなに危険なんですね!
やはり自分の身を守るという意味でも、自転車に乗るときにはヘルメットを被るということを徹底してほしいですね
なるほど。まさにこのキャンペーンのキャッチコピーどおり、「しようさせようヘルメット」なんですね~
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ヘルメット警部?
とつぜんヘルメット警部がフリーズした。
「フリーズ」の文字通りアナウンサーの呼びかけに反応することなく硬直している。番組中に。
声をかけるアナウンサー。微動だにしないヘルメット警部。なんか横揺れしてるKノハ警部。
え、大丈夫これ?放送事故?
視聴者の動揺が最高潮に達したとき、ふたたびヘルメット警部が動き出した。
・・・そのとおりです。ぜひこのキャッチコピーを心にとどめておいてほしいですね
な~んだヘルメット警部、びっくりしちゃいましたよ~
そういえばヘルメット購入には助成金が出るんですよね
ほんとなんだったんだろう。いやサラッと続けないでくれ。説明をくれ。
(後日なんどかこのコーナーが再放送されているのを観ているのだが毎回このヘルメット警部がフリーズするくだりが出てくる。カットされずに残してあるということは意図した演出であるのだとは思うけど、ユーモアにしては放送事故色が強すぎる。)
こうしてとまどう視聴者を置いてきぼりにしつつ「ヘルメット購入者には市から助成金がでるから申請してね」と案内してコーナーは終了した。
強い。地元ケーブルテレビは強い。みなさんも実家が地元ケーブルテレビ局に加入していたら番組チェックをしてみたらいかがだろうか。人生を変える出会いがあるかもしれない。
あと自転車に乗るときはヘルメットをかぶろう。ヘルメット警部とのやくそくだ。