最近steamのストアTOPページで見かけて『Citizen Sleeper』というゲームを購入したんですが、もろもろ含めて「いいな…」となったので紹介します。いいよ…。
…というわけでサイバーパンクな世界観のなか、大企業による搾取から逃亡してきた疑似生命体となって生き抜いていくゲームになります。
ゲームシステムはTRPGをリスペクト。ターン毎に割り振られるダイスの目を利用して探索や交流といったアクションを行い、そのアクションによって進行する物語は豊富なテキストによって語られていきます。
良いところ:ローカライゼーションがすごくしっかりしてる
ストアページで日本語のタイトルビジュアル見たときから思ったのですが、このゲームはすごくローカライゼーションがしっかりしている。
日本語版タイトルはカタカナで『シチズン・スリーパー』と表記されるのですがその日本語タイトル部分にちゃんとビジュアルに合わせた太めのデザイン書体(デラゴシック?)を採用しているのですよね。ちゃんと他言語でのフォントデザインを考慮するゲームは良いゲーム…(そのへんのインディーズゲームやアプリゲーム日本語タイトルですぐにMSゴシックとか使うじゃねえかやる気だせ)このフォントデザインはタイトル部だけでなく本編のUIなどにもしっかり適用されています。
さらにゲームを進めていくと、テキスト部分も翻訳がしっかりしていてすごく感心する。ただ原語から日本語にゲーム進行に支障がない程度に訳しました、というわけではなくちゃんと読ませる文章になっているのが素晴らしい。テキスト主体で進めていくゲームなので、テキスト翻訳がしっかりしているのは本当にありがたい。おかげでどっぷりゲームの世界観に入り込んでしまう。
日本語に訳してもらえるだけでもハッピーなのに、そのクオリティが高いのはまさに僥倖、これだけの手間をかけてもらえたゲームはどうか日本で売れて評価されてほしいなと思います。
良いところ:主人公が不憫かわいい
主人公(プレイヤーキャラ)が不憫かわいくて良いです。
主人公である「スリーパー」は疑似生命体です。これはどこかのだれかが企業と契約して自分の人格を人工的な身体(フレーム)に移植することで造られる大量生産品で、宇宙空間での重労働に使われる企業の所有物だそうで、設定つらすぎん?
というわけでそもそも人権がないのに加えて、逃亡防止のために追跡用トラッカーが仕込まれていたり身体にソニータイマー的なものが仕込まれていて定期的に安定剤を打たないと死んでしまうというハードモード仕様。またテキストで読む限りどうやら身体的な感覚自体が鈍いようで味覚が弱かったり痛みをあまり感じていないようなのが不憫さを煽ります。
主人公は初期スキルの異なる3種類のクラスから選べて、私は電脳関連技術に優れてかわいいドローンくんも付いてくる「操縦士」を選んだのですが、この「操縦手」の立ち絵も上半身裸の上にジャケットを肩掛けしていて病み上がり感が強い。ちゃんと袖を通してほしい。
まあ不憫さのピークは冒頭の真空氷点下の貨物宇宙船内に隠れて密航してきた辺りで、それ以降はちゃんとやさしい隣人にも恵まれつつたくましく自分の生活を打ち立てていくのですが、なんとか幸せを掴んでほしい…いや私(プレイヤー)の選択次第だけど…絶対救ってやるから…
良いところ:電脳空間のビジュアルがかっこいい
このゲームでは主人公たちが生活する現実世界とは別に、情報のネットワークによって成り立つ電脳空間の〈クラウド〉があり、主人公「スリーパー」はその電脳空間に自分の意識を直接送り込むことができます。
この電脳空間に関するのビジュアル表現がまたいいんですよ。
サイバーパンク作品での電脳空間というと、RGBの原色が瞬くネオンの色彩みたいなのを私は想像してしまうのですが、このゲームでの電脳空間はモノクロ的な表現をされているんですよね。どことなく滲んだ墨絵を連想させるような低彩度の空間。かっこいい。
電脳空間に現れる人工知能やAIといった住人たちのデザインもまたかっこいい。たぶん意図的にどのキャラクターも「顔」が無い。無貌の存在たち。かっこいい。
あとはこれは翻訳の勝利なんですが、この電脳空間の住人たちが使うワードが最高すぎる。現実世界での身体をもつ主人公を指して〈実在物〉と呼ぶのとか本当に最高。原語ではどうなのか分からないけど、とにかく翻訳の勝利です。
つらつら自分が良いと思った点を書き連ねてきましたが、世界観めっちゃよくてがっつりSF小説を読んでいるような満足感を味わえるのでおすすめのゲームです。みんなやるといいよ。