高校生のころ同級生から「ウインクキラー」という、今で言うところの人狼ゲームに近いめちゃくちゃ面白い遊びを教えてもらった。めちゃくちゃ面白かったので昼休みには毎日のように皆で集まってウインクキラーをやっていた記憶がある。
高校を卒業してからはウインクキラーをやる機会はないまま月日が流れていった。というか昨今これほど人狼ゲームというジャンルが人気を博しているというのに、ウインクキラーというゲームの名を聞くことが高校以来一度もなかった。すごくローカルなゲームだったのだろうか?
というわけでウインクキラーというめちゃくちゃ面白いゲームの遊び方をここに書き記しておこうと思う。ただ人狼ゲームと同じように、遊び方だけ説明されてもなにが面白いのかピンとこないかもしれない。それでもこんなゲームが自分の高校生活に彩りを与えてくれた、そんな記録としておきたい。
もしこの記事を読んでウインクキラーを知っているという方がいらっしゃったら、コメント欄にでもひとこと残してもらえるとうれしい。
ゲームの準備
ウインクキラーは4人以上で行うゲームだ。用意するものはトランプと、なんでもいいので手で掴める大きさの小物をひとつ(高校の時は消しゴムや空き缶などを使ってたと思う)。
トランプは参加者人数×2の枚数だけ抜き出す。例えば6人でやるのなら12枚だ。このときジョーカーを1枚と絵札(なんでもいい)を1枚入れて、残りのカードは数札になるようにする。
用意したカードをシャッフルしたら参加者それぞれに2枚ずつ配り、全員が輪になって座る。輪の中央に用意した小物(便宜上、本文中ではこの小物を「フラッグ」と呼ぶ)を置いたら、準備は完了である。
まずそれぞれ、自分の手札を他の人に見られないように確認する。このとき手札にジョーカーがあった人は《犯人》、絵札があった人は《共犯》となり、数札しかない場合は《一般人》となる。ウインクキラーは参加者がこの3つの役割を与えられてゲームを進めていくことになる。
各自が役割を確認したら2枚の手札は自分の正面に伏せて置き、ゲームを開始する。私がやっていたときはみんなで「ウインクドーン!」と言ってゲーム開始の合図としていた。参考にしてほしい。
人狼ゲームとは違い、ウインクキラーは複数パートに分かれてはいない。ゲームが始まったら輪になって周りの参加者と会話し観察しあいながら、それぞれの役割に沿った行動をしていくことになる。
ただひとつルールがある。参加者はゲーム中はゲームに関わることを喋ってはいけない。例えば「誰が犯人なのかな~こわいよ~」ぐらいなら構わないだろうが「私は○○さんが《犯人》だと思う」などとは口にしてはいけないのだ1。なので以下で説明するゲームの進め方については、基本アイコンタクトのみで意思の疎通を図るということを覚えておいてほしい。
役割とゲームの進め方
《犯人》は《一般人》をすべて殺害できたら勝利となる。ここでゲーム名の由来が出てくるのだが、《犯人》はウインクをして《一般人》を殺していく。あのウインク。物理的にウインクするのだ。
《犯人》が自分に向かってウインクしたのを見てしまったら、《一般人》は自分の手札を1枚表向きにめくらなければならない。もし2枚すべてが表向きになったらそこで退場となる。手札がライフだと思ってもらえればいい。
このウインクはなるべく素早く、それでいて見た相手が確実にわかるようにはっきりとする必要がある。そのためウインクキラーを遊んでいると自然とウインクが上手くなっていくというメリットがある。
《共犯》は《犯人》をサポートする役割だ。なので《共犯》は《犯人》のウインクを見たとしても手札をめくらなくていい。そうすることで《共犯》は自分の役割を《犯人》に知らせることができる。
あとは状況を見ながら《犯人》への疑いをそらし、《一般人》を退場させるように仕向けていくことになる。ゲーム的には一番おもしろい役割だろう。
《一般人》は参加者に隠れた《犯人》をつるし上げる(=手札をすべて表にする)ことができれば勝利となる。《犯人》の手札をめくらせるために、《一般人》は「告訴」というアクションを行うことができる。「告訴」は手札1枚を犠牲にする、つまり表向きにすることで発動できるが、実行には2人のプレイヤーが必要になる。手順はこうだ。
①2人のプレイヤーはアイコンタクトと周りにバレない程度の手ぶりなどで「誰を告訴するか」「どちらが自分の手札を犠牲にするか」を決めておく。
②プレイヤーのひとりが「告訴!」と宣言して自分の手札を1枚めくる。
③もうひとりが同時に輪の中心においてあるフラッグを掴む。
④「告訴」を宣言したプレイヤーとフラッグを取ったプレイヤーは「せーの」の合図で任意のプレイヤーをひとり指差す。もしふたりの指差した相手が一致した場合には、指差されたプレイヤーは自分の手札を1枚めくらなくてはならない。もし一致しなかった場合はその「告訴」は無効になる。
…というわけで「告訴」を使って2回《犯人》を指摘することができれば勝利となるので、《一般人》は《犯人》と目が合わないことを祈りつつ周囲を観察し、また自分以外の《一般人》と意思疎通を図って(アイコンタクトだけで!)上手く「告訴」を行っていく必要がある。
戦略
ここで重要なのは【告訴は2人のプレイヤーと1枚の手札が必要】であり、また【《一般人》でなくても実行できる】という点だ。つまり《共犯》が《一般人》のふりをして「告訴」をするように仕向け、手札をめくらせることが可能になる(この場合は指差す段階で違うプレイヤーを指差せば無効にできる)。あるいは《共犯》がわざと自分の手札(絵札ではない方)をめくって「告訴」を行うことで「自分は《犯人》や《共犯》ではない」と印象づけることも出来る。
さらにさらに「告訴」を実行できるのは手札をめくって宣言したプレイヤーと、宣言されたタイミングでフラッグを掴んだプレイヤーのふたりである。つまり、フラッグを先に獲ってしまえば「告訴」の権利を奪うことができるのだ。なのでウインクや策略が下手でも最悪フィジカルと反射神経を駆使してフラッグを奪いまくれば力業で《一般人》を踏み倒すこともこのゲームでは可能である。実際「手札を見てみたらジョーカーと絵札だった(=自分が《犯人》で《共犯》)」という場合ではこういった強硬手段に出ざるをえないこともありうる。
このように「告訴」というアクションのもつ重み、実行のための条件の複雑さから最低でも1枚は手札が犠牲になるというリスクの高さまですべて含めたその重みが、このゲームに無数の戦略とドラマを与えているのだ。
またゲーム中はほぼアイコンタクトで意思疎通を図るという仕様も、いい具合にゲームをかき回してくれる。つまり、アイコンタクトだけで意思を伝えるのはすごく難しい。なので「気持ちが伝わったと信じて自分の手札を切って告訴したら相手は微動だにしなかった」「全然違うプレイヤーを指差した」「でも《共犯》ではない(単に伝わってない)」ということは多々起こる。
そういった難しさも踏まえて、アイコンタクトという極めて身体的なコミュニケーションを懸命に試みる体験というのはなかなかに楽しいものである2。
以上がウインクキラーの遊び方である。
人狼ゲームとくらべてパート分けなどがなく、好きなタイミングでゲームを進めることができるので学校の昼休み時間中でも2~3回は遊べたように思う。
説明では《共犯》は1名という設定で進めていたがもちろん参加人数によって《共犯》の人数を増やしてもらって構わない。
長々と書いたがやっぱりウインクキラーの実際のおもしろさは文章では伝わり切れないと思う。ただこんな面白いゲームがあって、高校生の私は毎日ウインクをしまくっていたということは伝えたい。
- ゲーム中はアイコンタクトを駆使しながら口ではどうでもいい世間話をしてることが多い。「今度のテストめんどい~」とか喋ってた友達がいきなりウインクにやられるという非情な世界だ。 ↩︎
- 「ウインクキラーがオンライン対戦ゲームになったら…」とたまに妄想してみることもあったが、文中でも言うようにアイコンタクトという極めて身体的なコミュニケーション手段が重要なゲームなのでそれをデジタルの世界に落とし込むというのはなかなか難しいと思う。VRのアイトラッキングの精度によってはアバターを使ってVR上でウインクキラーが出来るかもしれない。 ↩︎