ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』感想

2024年7月15日

ウェイクフィールド『ゴースト・ハント』(東京創元社)を読んだ。

正当派英国怪奇小説、最後の昏き光輝の書。

月村了衛氏による文庫帯の推薦文より

幽霊屋敷・呪術・民間信仰と儀式(因習村!)…など、よりどりみどりの怪奇小説を楽しめる。(ちょくちょく女性蔑視・嫌悪的な表現が出てくるので人によっては注意かも)


表題作『ゴースト・ハント』は過去に30人近くの住人が自殺しているという曰くつきの幽霊屋敷からライブ実況をするラジオ番組という体裁で、今でいうモキュメンタリー作品となっている。ラジオ番組の聴き手(=読者)はレポーターの実況から現場の状況を想像するのだけど、その状況が徐々に悪化していって自分はただそれを観察することしかできないというのが怖い。あと終盤、2階の部屋にひとがいっぱいいるって実況から伝わった瞬間ゾッとした。

個人的に怖かったのは『目隠し遊び』
真っ暗な屋敷のなかを手探りで彷徨うというシチュエーションがまず怖すぎる。そして日が暮れてから屋敷の中に入った、そんな些細なきっかけから取り返しのつかない事になるという、ある意味で運命の無慈悲さ(それは突然の悲惨な事故・災害に直面したときに浮かぶ感情に似てる)に通じる展開が恐ろしい。なんか私は『まんが日本昔ばなし』の「吉作落とし」を連想してしまった。

最後に収録されている『蜂の死』はホラーストーリーとは違う、でもこのジャンルともいえるものがない、分類が出来かねる奇妙な味わいの話だけど面白かった。科学とオカルト、大戦の記憶と個々人の過去、男女の感情のちょっとした絡まり合い…そうしたさまざまな要素が泡のように現れでては表面に溜まっていき、ある瞬間に因果のない破裂が起こってすべてが消え去る。夜に見る夢が構造そのままに小説の形をとったような作品。

https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488578039